こちら、なんでも屋でございます【3】
「着いた。ここが斎藤さんがいるであろう旅館だ」
「へー…結構古いね」
「幕末ぐらいからあったらしいからね」
「へー…老舗旅館ってわけか」
「それともう一つ、ここの女将が斎藤さんの義理のお姉さん」
「へー…つながってるんだ」
「では行きますか!」
沙羅は躊躇なく足を進め旅館に入っていった。
我ながらこんなところは綺羅にそっくりだなと思う。
「こんにちわー」
古い旅館内に沙羅の声が響き渡る。
「いらっしゃいませぇ」
奥から出てきたのはまだ30代ぐらいの女性だった。
たぶんこの人が女将さんだろう。
「あの、すみません。斎藤なつめさんいますか?」
「あら、もしかしてなつめのお友達ですか?」
「は、ハイ…一応」
「そうですかぁ…でも、なつめならつい昨日この旅館を去りました」
「え!?」
「あ、あの…具体的にどこに行ったとかは?」
「いいえ…あの子は昔から不思議な子でしたから……私にもどこへ行ったのやら…」
「そう、ですか…」
女将さんは苦笑し、小さな紙切れを渡してくれた。
「これ、なつめの電話番号です。携帯を変えていない限りは繋がると思います」
「い、いいんですか!?」
「ハイ、なつめのお友達ですから」
少し心が痛んだけどありがたく電話番号をいただく事にした。