こちら、なんでも屋でございます【3】
なつめさんが近づいてきて、私の手をそっと握りました。
『俺、無気力だし、だらしないし、早苗さんには不釣り合いだと思うけど…でも俺にとって早苗さんは必要な存在なんだ…だから…ッ、俺と"結婚″してくれませんか?』
突然のプロポーズに私は驚き、涙が溢れていた。
そんな私をなつめさんは優しく抱きしめたのです。
そのせいで余計涙が止まらなくなったのも事実です。
家に帰り、私はその事を両親に報告しました。
しかし、返事は前と同じ。
私は必至に両親を説得したのですが…聞いてもくれないのです。
付き人の由梨にも協力してもらい説得を試みたんですが…結果は何度やっても同じ。
なつめさんに返事もできないまま時間だけが過ぎていきました。
このままじゃダメだと思い、私は…またなつめさんを呼び出しました。
今度は別れ話ではなくプロポーズの返事。
その日のなつめさんの格好はいつもとは違っていました。
長かった前髪を切りそろえ、眉毛も整えとても見違えるような姿でした。
『この前のお返事です…が』
ゴクリッと唾をのむ音が聞こえた。
『私でよければ……妻に…してください』
そう返事をした瞬間、なつめさんは『はぁあーッ』といいしゃがみこみました。
『だ、大丈夫ですか!?』
『うん、大丈夫。断られるかと思ってヒヤヒヤしてたんだ』
その時のなつめさんの照れた笑顔は今でも忘れられません。