【BL】意地っ張りな恋人くん
「そういう訳じゃないけど……」
「じゃあ好きか?」
「好きか嫌いかで言われれば、まぁ……」
「だったら俺を恋人にしろ。」
恋人って………
あー、やっぱそういう意味の好きだよなぁ。
「出海、ちょっと落ち着け。」
「落ち着いてる。今好きだって言ったろ、何がダメなんだ。」
何がって……。
俺もお前も男ってのが一番の問題だろ!
「あのね、俺もお前も男。」
「そんなこと言われなくても分かってる。別にいいだろ、お互い想い合っていれば。」
「想い合ってるって……」
「俺のこと好きって言った。」
「そりゃ好きか嫌いかで言ったらだろ。俺の好きは、弟のように思ってるって意味で…」
俺の弁解を聞いて、出海は視線を落とした。
「それじゃ……ダメなんだ。」
「え?」
「それじゃダメだ!ずっと一緒にいて、家に通って、ご飯も作って、掃除もして、俺の何が不満だって言うんだよ!?」
捲し立てるように言いきった出海は、肩で息をする。
その足元に、ポタポタと落ちる滴。
顔を下げていて見えないけれど……
これ、泣いてるよな?
「あ、あの、出海ちゃん?泣かなくても」
「泣いてねーよ!ちゃん付けすんな!」
と言いつつ声が震えている。
何で、どうして、と繰り返し呟き、滴を落とす。
困ったなぁ……
一体どうすりゃいいんだ。
どうしたもんかと困り果てた俺は、とりあえず出海の頭に手を乗せた。
「何で……どうしてそんな優しくすんだよ!」
慰めようとしただけなのに、何故か出海はさらに泣き始めた。
「悪かったよ、だから泣き止んでくれ。」
「泣いてねーし、もういい!」
出海は俺の手を払いのけ、そのまま止める暇もなく家から出ていった。
残された俺は、しばらく立ち尽くしていた。