【BL】意地っ張りな恋人くん


「そういう訳じゃないけど……」
「じゃあ好きか?」
「好きか嫌いかで言われれば、まぁ……」
「だったら俺を恋人にしろ。」

恋人って………
あー、やっぱそういう意味の好きだよなぁ。


「出海、ちょっと落ち着け。」
「落ち着いてる。今好きだって言ったろ、何がダメなんだ。」


何がって……。

俺もお前も男ってのが一番の問題だろ!


「あのね、俺もお前も男。」
「そんなこと言われなくても分かってる。別にいいだろ、お互い想い合っていれば。」
「想い合ってるって……」
「俺のこと好きって言った。」
「そりゃ好きか嫌いかで言ったらだろ。俺の好きは、弟のように思ってるって意味で…」


俺の弁解を聞いて、出海は視線を落とした。


「それじゃ……ダメなんだ。」
「え?」
「それじゃダメだ!ずっと一緒にいて、家に通って、ご飯も作って、掃除もして、俺の何が不満だって言うんだよ!?」


捲し立てるように言いきった出海は、肩で息をする。

その足元に、ポタポタと落ちる滴。

顔を下げていて見えないけれど……
これ、泣いてるよな?


「あ、あの、出海ちゃん?泣かなくても」
「泣いてねーよ!ちゃん付けすんな!」


と言いつつ声が震えている。


何で、どうして、と繰り返し呟き、滴を落とす。


困ったなぁ……
一体どうすりゃいいんだ。

どうしたもんかと困り果てた俺は、とりあえず出海の頭に手を乗せた。


「何で……どうしてそんな優しくすんだよ!」


慰めようとしただけなのに、何故か出海はさらに泣き始めた。

「悪かったよ、だから泣き止んでくれ。」
「泣いてねーし、もういい!」


出海は俺の手を払いのけ、そのまま止める暇もなく家から出ていった。


残された俺は、しばらく立ち尽くしていた。


< 5 / 10 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop