【BL】意地っ張りな恋人くん
部屋のドアを慌ただしく開けて、出海を中へと放り込む。
「痛っ………おい、一体何なん――」
「――それは俺の台詞だ!」
ドンッと出海を壁に押し付ける。
「お前こそ何なんだよ……。好き放題言い逃げして、急に顔を出さなくなったと思ったら、もう次の男か?」
「はぁ!?アイツはそんなんじゃ――」
「――だったら!どうして………」
「…………ヒロ?」
「どうしてあんな顔して笑う?俺の前じゃ笑わないくせに。」
そうだ。
昔はよく見ていたはずなのに、最近、コイツの笑顔を見ていない。
俺以外に向けるあの笑みに胸がざわついた。
「………なんだよ、それ。アンタさ、俺がこの前言ったこと忘れたの?俺はヒロが好きなんだよ。好きだって言ったんだよ。でもヒロはそれに応えてくれなかった。応えられないなら……もう、放っておいてくれよ!」
胸を力一杯押され、はね除けられる。
「俺が誰に笑いかけようと、ヒロには関係ない!」
「ダメだ。」
「は?」
「俺以外にそんな顔見せるな。」
そうだ、本当に俺が好きだって言うなら。
「俺だけに見せていればいいだろう。」
「何訳分かんないこと言ってんだよ。もうアンタ、意味わかんねー。」
「分かるだろ。」
逃げ腰になっている出海を、そっと抱き締める。
「やっ……離し――」
「妬いたって言ってんだよ。」
「え………」
「だから好きなんだよ、お前が。出海を独占したくて堪らないんだよ。」
「う、嘘だ……。だってこの前は……。」
「悪かったよ。一緒にいるのが当たり前すぎて、自分でも分からなかったんだ。そういう意味で好きだなんて。」
だって男だぞ?
普通考えもしない。
でも、離れて分かった。
傍にいないと不安になって、会いたくなる。
俺にだけ笑っててほしい。
独占したい。
これって、やっぱり……
「好きだよ、出海。」
そういうこと、だろ?
「うぅ………っ」
「馬鹿、なんで泣くんだよ。」
「うっせー、泣いてねーよ……」
「あー、はいはい。」
意地っ張りなコイツを、泣き止むまで腕の中で閉じ込めた。