ワーキングガールズ・クリスマス
「だめ、です……」


力の入らない両手を、必死で動かして課長の胸を押す。


けれど、いとも簡単に課長の手で押さえつけられてしまった。


ーどうしてこんなことにー


彼の与える甘いキスにいちいちぴくりと反応し続ける自分を恥ずかしく思いながら、鈍くなってきた思考を懸命にフル活動させる。


岬課長の考えていることが全く分からない。


いつも私をからかって遊ぶくせに、こうして気まぐれみたいに甘くして。


専務の娘さんと婚約している身で、私に触れて。

私に恋人がいるのだと決めつけて詰るくせにキスしてきて。


「ひどい……」


気づくと私の頬を、涙が伝っていた。


あとからあとから溢れて止められなかった。
涙も、混乱する気持ちも。


私の濡れた声に気がついたのか、岬課長が顔を上げた。


「柏木……」


驚いた表情を浮かべて私を見下ろす姿に、私の中の“何か”が音をたててきれた。



「せ、専務の娘さんと
婚約したんじゃなかったんですかっ!?

結婚秒読みのくせに私とこんなっ、キスしたりなんかしてっ…無責任なんですよっ。
少しは相手の気持ちを考えて下さいっ!!

せっかく結婚することになったのに浮気されたりしたらっ、娘さん辛いに決まってますっ!!

そういう、そういうことっ…少しは考えてよ……」


これ以上は息が続かなくて、そこで私の言葉は途切れた。

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