ワーキングガールズ・クリスマス
ちいくんがうちの園に来たのが2歳だった、今年あの子は5歳。


三年も不毛な片想いをしているあたしを友人の舞は馬鹿と言って、


『キメるなら今年が最後ね。
来年は弥生も園児の卒業準備で忙しいだろうし、向こうも入学準備でバタバタ。

話聞いてる限りじゃ来年も千冬くんの担任になると思うけど、あんたもいい歳なんだから他にいい人見つけないと行き遅れるわよ』


私みたいにね、と寂しそうに笑った。


彼女もまだあたしと同じ独身で、この夏結婚も考えていたカレと終わったばかりだった。


だけどあたしだってあの子に言ってやった。
自分だって不毛な恋してるじゃないって。


長年の上司への気持ちに目覚めてしまった舞を、あたしはお返しとばかりに笑ってやったが。


だんだん笑えなくなっていることに、お互い気づかないふりをしている。


こうして一人で寒い夜道を歩いていると殊更それが強く感じられて、結婚への焦りと、千秋さんへの気持ちをどうしたらいいのか分からなくなる。


「うわ、きれい……」


駅に着くとイルミネーションが綺麗で、ふいに泣きそうになった。


周りがカップルばっかりだ。


あたしは、なるべく見ないようにして改札をくぐり、丁度きた電車に逃げるようにして乗り込んだ。


ドアの近くに立って、動き出した景色を眺めてホッと息を吐く。


そして思い出す。

……こんなあたしでも、千秋さんと出会うまでは彼氏がいたのだ。


優しくていい人だった。


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