ワーキングガールズ・クリスマス
二人が住む部屋はどうやら階段から一番遠いところらしく、階段を登り終えても長い廊下を進まなければならなかった。


廊下を突き進むうち、遠くに扉を開けて誰かが立っているのが見えて、その小さなシルエットにあたしは思わず叫んだ。


「ちいくんっ……!!」


「やよいせんせえ……!!」


あたしの声に弾かれたように飛び出した、小さなパジャマ姿のちいくんが、裸足のまま走って飛びついてきた。


それをしっかりと受け止めて強く抱きしめる。


「せんせえっ……ひくっ……」


震える身体は温かく、ひとまず一人の無事を確認出来てあたしはホッとした。


「パパがっ……パパがっ……」


ちいくんは大きな瞳にいっぱい涙を溜めてら一生懸命伝えようとしてくれる。


「ちいくん、パパはどこにいる?」


あたしが優しく問いかけると、ちいくんはしゃくり上げながらお風呂……と言った。


ちいくんを抱き上げたまま家の中に入る。


お邪魔しますなんて言ってられないから、向きも揃えずブーツを脱いで、お風呂場らしき方へ走った。


「千秋さんっ!?」


開けっ放しの洗面所に飛び込むと、そこに彼はいた。


部屋着らしきものは着ているが、壁に背中を預けたままグッタリと目を閉じて。


お風呂場と聞いた時まさかお風呂で素っ裸だったらどうしようと不安を抱いたけれど、服を着ていて内心ちょっと安心した。


「千秋さん?大丈夫ですか?」


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