ワーキングガールズ・クリスマス
肩に頭をのせて囁く。


と、ふいに千秋さんの顔が赤くなった、と思う。


何故ってあたしからは耳と横顔しか見えないから。


でも見えるわずかな部分は確かに赤くなっていた。


あれ、と思っているうちに彼は片手で口元を押さえて顔を背けてしまって。


あーもうとか、どうしよ、とかぶつぶつ言っている。


よく分からなくてあたしが千秋さん?と声をかけると突然すくっと彼は立ち上がり、ダイニングテーブルの方へ向かった。


そして何やら紙袋の中をごそごそやっている。


何してるの?


首を傾げるあたしのもとへ、千秋さんは小さな箱のようなものを持って戻ってきた。


「……小川弥生さん」


真剣な表情の彼が床に座り込み、間抜けな顔をしたあたしの前に跪く。


「は、はいっ!!」


緊張が伝わってきて声が上ずった。


ーな、なに?千秋さんたらどうしたの?ー


これから何が起こるのかドキドキして待つ、そんなあたしの目の前に差し出されたのは。


「俺と、結婚して下さい」


「へ……」


なんと、小さくて、でもあたしが見たことないキラキラした石が嵌まった指輪が、彼の開いた箱の中に収まっていた。


う、うそ!!信じらんない!!


「え、結婚て、あ、あたしが、あなたと!?」


驚きすぎて上手く言えずに焦りまくるあたしの右手を、千秋さんはそっと取り。


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