ワーキングガールズ・クリスマス
まだ保育園に行っていた頃のあたしと父の関係は、山口親子よりも淡白で。


千秋さんみたいに手作りの手提げなんか作ってくれなかったし、お迎えは近所のおばさんだった。


今思えば男手一つで育ててくれていたことに感謝できるけれど、当時は寂しさしかなかった。


小学校に上がるまでしか一緒にいられなかったから、余計その辺りの記憶が濃いのだ。


「保育園があたしの寂しさを紛らわせる場所でした。
友達も先生も沢山いたから賑やかで楽しかった。
特に園長はよくしてくれて……だから保育士になろうと思ったんです」


それに、千秋さんとちいくんみたいな人の手助けがしたかった。


出来る限り親御さんのサポートをして、子供が保育園は楽しいと思ってもらえるように。


その為には笑顔が必要だった。


「それでいつも、笑顔……」


はい、と笑って頷く。


……でも、心のどこかでいつも、思っていたんだ。


あたしもいつか結婚というものをして、愛する人と家庭を築いていきたい。


千秋さんとちいくんみたいな、寄り添い合う素敵な……。


「千秋さん」


あたしは彼を呼んで姿勢を正した。


「あたしを……家族の一員として、迎えて頂けませんか?
ずっと夢見てたんです、二人みたいな家族をつくること」



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