ワーキングガールズ・クリスマス
仲間はみな口を揃えて前の方がよかった、と言うのに。


ーー彼だけが私の本当の部分を知ってくれている気がして、胸が高鳴った。


失恋直後だというのに、その一言で私は彼に恋をした。


ーー一瞬で恋に落ちた。ーー


……なんて想いにふけっていると、急にジャケットのポケットが振動して私は飛び上がった。


「きゃあっ」


スマホをマナーモードにしたままだった、と思い出して慌てて取り出す。


そして画面に表示された名前を見て、危うくスマホを放り投げそうになった。


着信、岬英明。


ーきゃああああー


リアルタイム過ぎる人物からのコールに、心臓がバクバクいう。


だけど出ないわけにはいかなくて、何秒か間をあけてから私は恐る恐る耳に当てた。


「も、もしもし!」


『もしもし?柏木?』


心地いい低音ボイスが耳に響く。


『発注は間に合ったか?
まだ社にいるのか?』


「は、はい、なんとか間に合いました。
今ホッとして外眺めてます」


『そうか、お疲れ』


ドキドキしながら答える私とは対称的に彼は落ち着いた声だ。


『……じゃあいけるな』


「え?なんですか?」


労いの言葉にお礼を言うと、彼がボソッと何か言った。


『いや、こっちの話だ』


「なんですかそれ、言いかけてやめられると気になります」

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