ワーキングガールズ・クリスマス
話してよ、そう思うのに彼ははぐらかしてくる。


『今は分からなくていいんだ、気にするな』



「気にするな、とか言われたら余計気になりますよー」


話して、気にするな、その繰り返し。


「教えて下さい」


『まだだめだ』


何度聞いても教えてくれない課長に、私はだんだん腹が立ってきた。


「もう!一体なんなんですか!?
人のことからかうのもいい加減にして下さい課長!!」


彼はいつも私をからかって遊ぶ。


営業課フロアで、それはまるで漫才をする芸人のような認知度の高さだ。


しかしさすがに怒っている私に気がついたのか、彼は言った。


『悪かった、そう怒るなよ』


「……じゃあ教えて下さいよ」


つい拗ねたような口調になる。


あ、ガキみたい、そう思っていると。


「……これが答えだ」


スピーカー越しとは別に、直接課長の声が背後から聞こえたと同時に、背中に温もりを感じた。

驚いて手からスマホが零れ落ちる。


ボトッ、と床に落ちる音がいやにフロアに響いた。


「おい、スマホ落としたぞ。
壊れたらどうするんだ」


うそ、耳元で課長の声がする。
電話じゃなくてダイレクトに。


「み、岬課長……?」


まさか、と思いながら恐る恐る名前を呼ぶとなんだ?と左耳から声が聞こえてきた。


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