ワーキングガールズ・クリスマス
だけど、これ以上近づいたら触れてしまいそうな距離に彼の唇。
互いの吐息がかかって熱い。
切れ長の瞳は濡れて光って、私を誘う。
何も言えず抵抗することも出来ないままでいると、彼がすっと目を閉じて、あと数センチしかない距離を詰め始めた。
このまま、キスしてしまえたら。
思わず私も目を閉じてしまいそうになったけれど、
「……やっぱりだめ。」
もうほとんど触れかけたところで、彼の胸を押した。
「……なんで?」
少し悲しさを含んだ、それでもまだ艶のある声で彼が問う。
「なんでって…だって課長は、」
彼女がいるはずでしょう?
今の体勢が後ろめたくて、私は最後の言葉を飲み込んだ。
……社内ではもっぱらの噂である、専務の娘さんとの婚約。
私が課長を意識し始めた時にはもうすでに広まっていて。
本当だったらどうしよう。
入社以来何度も呑みに行っている気心知れた間柄だというのに、そう思うだけで怖くなって今まで真実を確かめられなかった。
「専務がもってきた見合い話を気にしてる?」
ずばりそのままな答えを、彼があまりにもさらりと言ってのけるから、思わずはじかれたように顔を上げた。
「分かってるなら、どうして……」
震える声を絞り出した私。
互いの吐息がかかって熱い。
切れ長の瞳は濡れて光って、私を誘う。
何も言えず抵抗することも出来ないままでいると、彼がすっと目を閉じて、あと数センチしかない距離を詰め始めた。
このまま、キスしてしまえたら。
思わず私も目を閉じてしまいそうになったけれど、
「……やっぱりだめ。」
もうほとんど触れかけたところで、彼の胸を押した。
「……なんで?」
少し悲しさを含んだ、それでもまだ艶のある声で彼が問う。
「なんでって…だって課長は、」
彼女がいるはずでしょう?
今の体勢が後ろめたくて、私は最後の言葉を飲み込んだ。
……社内ではもっぱらの噂である、専務の娘さんとの婚約。
私が課長を意識し始めた時にはもうすでに広まっていて。
本当だったらどうしよう。
入社以来何度も呑みに行っている気心知れた間柄だというのに、そう思うだけで怖くなって今まで真実を確かめられなかった。
「専務がもってきた見合い話を気にしてる?」
ずばりそのままな答えを、彼があまりにもさらりと言ってのけるから、思わずはじかれたように顔を上げた。
「分かってるなら、どうして……」
震える声を絞り出した私。