ワーキングガールズ・クリスマス
すると、一瞬きょとんとしたのちなぜか彼は笑った。


ーなんで、どうして笑うの?ー


訳が分からなくて首を傾げると、彼は笑うのをやめて意地悪そうに目を細めて言う。


「じゃあお前はどうなんだ?」


「えっ?」


言われたことが分からず戸惑う。


「彼氏、いるだろう?
お前こそ俺とこんなことしてていいのか?
婚約者がいるからと俺を咎めるならお前だってそうじゃないのか?」



彼氏、今は彼氏なんて…そこまで考えてはっとした。


夏の終わりまで付き合っていた彼氏と別れたことを、課長はきっと知らないのだ。


課長は誤解している。


「あ、あの、実は……」


「言い訳なんて、聞きたくない」



事情を説明しようと口を開きかけた私の上から、言葉をかぶせたかと思うと。


急に彼の顔が私の喉に近づいた。


次いでチクリと小さな痛みが走って、チュッとフロア中に響いたリップ音。


熱い息が喉にかかって、彼が首筋にかみついたのだと理解した。


「っ……」


私が驚いて固まっているのも気にせず、彼は首筋に小さな痛みを与え続ける。


時々ペロリと舌で触れられて、思わず声が漏れた。


「んっ……」


自分の声が聞いたこともないくらい艶めいていて、無駄とは分かっていながら私は最後の抵抗を試みる。


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