やくたたずの恋
「でも、せっかく敦也さんが私と過ごすためにお金を支払ってくださっているのですから、その分働かせていただかないと!」
 一生懸命任務を遂行しようという覚悟で、両手を握り、きゅっと唇を引き締める。そんな仕草までもが、健気で可愛い。
 そこには、血生臭さは感じられない。人の地位や財産を利用してやろうと、獲物を弄ぶ肉食獣のような匂いは、彼女にはなかった。
 敦也はふと、これまで彼が付き合ってきた女たちに思いを馳せる。
 見た目がどんなに清楚で純粋そうでも、敦也の背景にある家柄や財産に目を向けることが多かった女たち。彼女たちには、いつも獰猛な雰囲気と得体の知れない匂いが漂っていたものだった。
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