やくたたずの恋
 だが、雛子はそういったタイプの女性ではなさそうだ。出会って数時間しか経っておらず、断定はできないが、きっとそうだろう。
 あの影山社長も、彼女のそんな性質を見込んで、恭平に差し向けたのではないだろうか? そして恭平が彼女を見て、志帆を思い出すであろうことも見越して。
 そう考えれば、敦也の胸に、冷ややかな風が吹く。この健気で可愛さに溢れる彼女が、犠牲者になるかも知れない――そんな予感を覚えてしまうのだ。
 ならば、祈るしかないだろう。彼女が、傷つくことがありませんように、と。
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