やくたたずの恋
 ……何だ、「おっさん」がいるんじゃない。
 電気を点けようと思ったが、起こしては申し訳ない、と雛子は暗いままの部屋の中で、デスクの前へとやって来た。
 ペン立てからボールペンを取り出し、デスクの上にある「勤務時間表」という用紙に、今の時間を書き込んだ。仕事が終わった後は、一度この事務所に戻り、帰ってきた時間を記入するように、と言われていたのだ。
 記入を終えると、雛子はデスクを回り込み、恭平へと近づいた。静かな寝息を立てる彼の顔。それが外光のスポットライトを浴びて、暗闇に白く浮かび上がっている。
 ただ見ている限りでは、なかなかの顔立ちの男なのだ。敦也は甘く優しげな王子様系の男性だが、恭平は違う。男性らしいセクシーさが、渦巻いて漂っているのだ。
< 136 / 464 >

この作品をシェア

pagetop