やくたたずの恋
 何とか、この人に結婚を了承してもらわないと。
 雛子は決意を新たにしながら、顔を彼へと近づける。驚かさないように静かに起こそうと、彼の肩へと触れようとした。
「……志帆?」
 雛子の気配に気づいたのか、恭平は薄目を開け、こちらを見た。
 ……シホ? シホって何?
 恭平が呟いた、謎の言葉。それを頭の中で繰り返すうちに、恭平が手を伸ばし、雛子の頬に触れた。
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