やくたたずの恋
11.恋せよ、乙女。(前編)
はぁ、と恭平の吐息が漏れる。雛子の手の甲は、その熱を敏感に感じ取った。
手の甲で火が点けば、腕が導火線となる。ゆっくりと体に熱を伝えて、静かに爆発を待つだけだ。
だが、雛子の体がその熱で染まる前に、恭平が再びうわごとを漏らした。
「志帆……」
シホ。たったの二文字の響きなのに、多くの意味を含んで膨らんでいく。意味、と言っても、言葉では表せない類のものだ。
子猫を撫でた時の手触り。炎天下でこぼれ落ちる汗のきらめき。そんな一瞬の感覚を取りこぼすまい。彼の発する「シホ」という言葉は、その意志を含んでいた。
手の甲で火が点けば、腕が導火線となる。ゆっくりと体に熱を伝えて、静かに爆発を待つだけだ。
だが、雛子の体がその熱で染まる前に、恭平が再びうわごとを漏らした。
「志帆……」
シホ。たったの二文字の響きなのに、多くの意味を含んで膨らんでいく。意味、と言っても、言葉では表せない類のものだ。
子猫を撫でた時の手触り。炎天下でこぼれ落ちる汗のきらめき。そんな一瞬の感覚を取りこぼすまい。彼の発する「シホ」という言葉は、その意志を含んでいた。