やくたたずの恋
「起こしてしまって、申し訳ありません。今、仕事から戻ったところだったんです」
「分かった。お疲れ。今日はもう帰っていいぞ」
「は、はい。ありがとうございました。あの、それと……」
「何だ? 何か用か?」
「あの、『シホ』って、何のことですか?」
 恭平の目が、暗闇で鈍く光る。
 なぜ、お前がそれを知っている。ストレートな疑問を投げかける視線に答えようと、雛子は続けて口を開いた。
< 142 / 464 >

この作品をシェア

pagetop