やくたたずの恋
「……敦也は、優しかっただろ?」
「は、はい! とてもよくしてくださいました! 今度も、私を指名すると約束もしてくれましたし!」
 暗い中でも分かる、雛子の嬉しそうな表情。開いたばかりの花弁が見せる、力強い愛くるしさによく似ていた。
 いいねぇ、若いってことは。恭平は心で呟き、雛子を見る。
「敦也に惚れたか?」
「そ、そんな!」
 ……いや、ちょっとは素敵だな、とは思ったけどね。
 こういう人が、婚約者だったらいいなー、と。
 本音を隠しつつも、頬を赤く染める雛子を見て、恭平は、はぁ、と音を立てて煙を吐き出した。
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