やくたたずの恋
「敦也はおすすめだぜ? 優しくて気が利いて、最高の男だ。俺とは正反対でな」
 確かにそうですね。敦也さんは、あなたとは真逆な人でした。本当にその通りです。
 雛子は初めて、恭平の言うことに心から同意していた。うんうん、と何度も頷きそうになるが、ここは我慢。
「命短し、恋せよ乙女、か」
 恭平の呟きは、煙と共に部屋の中に白い筋を作っていく。
「お嬢ちゃんも、若くてピチピチなうちに、恋をしておけよ。お嬢ちゃんには、敦也のような男が似合う」
 またまた、何を言うと思えば。
 雛子は最初、恭平のこの言葉を、いつもの戯れ言の一つだと思っていた。だが、耳から心へと伝えていくうちに、その奇妙な重さが気にかかり始める。
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