やくたたずの恋
顔を俯けていた雛子は、ちらりと恭平を見る。触れれば一筋の切り傷ができそうな、研ぎ澄まされた表情。恭平はそれを一ミリもずらすことなく、雛子へと向けていた。
……怖い。まるでお父様みたい。
雛子の父は、「爽やかでクリーンな議員」として、世間に名を馳せている。確かに、有権者やマスコミには笑顔の大安売りをしているが、家庭では雛子や母にいつも冷たく当たっていた。
「娘一人しか生めなかった役立たず」と母を責め、「跡を継げない役立たず」と雛子を責める。自分の価値観が正しいと信じて曲げず、それからはみ出すものは「役立たず」として、価値も見いだしてもらえない。
そんな父の非道な表情が、今の恭平の顔にも浮かんでいる。
……怖い。まるでお父様みたい。
雛子の父は、「爽やかでクリーンな議員」として、世間に名を馳せている。確かに、有権者やマスコミには笑顔の大安売りをしているが、家庭では雛子や母にいつも冷たく当たっていた。
「娘一人しか生めなかった役立たず」と母を責め、「跡を継げない役立たず」と雛子を責める。自分の価値観が正しいと信じて曲げず、それからはみ出すものは「役立たず」として、価値も見いだしてもらえない。
そんな父の非道な表情が、今の恭平の顔にも浮かんでいる。