やくたたずの恋

「ちゃんとお前の意志を、父親に伝えろ。『巨乳好きのスケベなおっさんとは、結婚したくないです』ってな」
　自虐的な言葉にも、恭平は表情を変えない。ニュースを読み上げるアナウンサーのように、淡々と言葉を並べていく。
「今は21世紀だ。平成も20年を軽く越えてる。昭和でもなけりゃ、明治でも大正でもない。江戸時代でも平安時代でもない。宇宙旅行が可能な時代に、親の言いなりで結婚するなんてバカげてる」
　恭平はポケットからハンカチを取り出し、雛子の顔を拭う。流れ続けていた涙がチェック柄のハンカチに吸い込まれ、色を濃くした。