やくたたずの恋

     * * *


 自宅へと戻った雛子は、すぐさま二階にある自分の部屋へと向かった。
「雛子お嬢様! ご飯は召し上がらないんですかー?」
 お手伝いさんの声に返事もせず、部屋に入るなり、ベッドに突っ伏した。
 もうやだ! やだったらやだ! あんな男!
 足をバタバタさせて、布団の上を泳ぐ。だが、前にも進めるはずもなく、深く潜れる訳でもない。ただその場で、無駄なバタ足を繰り返すだけだ。
 その足にこめられているのは、あの男に対する苛立ちだ。そして自分のふがいなさへの怒りも、みっちりと含んでいる。
 恭平に言われたことは、どれも驚くほど真っ当だった。雛子だって、全て両手を上げて賛同したかったほどだ。
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