やくたたずの恋
 案の定、30分になる前にはチャイムが鳴った。ドアを開ければ、一気に夜の繁華街の匂いが漂う。そこに立っていた悦子が、朝には全く似合わない色気をぶんぶんと振り回していた。
 キャバクラ嬢並みのメイクに、飴細工のように巻いた髪。そして、V字に切れ込んだシャツの襟元からは、白い胸がこぼれ落ちそうになっている。
 ……うん、今日もあいわらずいい乳をしている。
 素晴らしい。これを見てこそ、清々しい朝を迎えられるというものだ。日本の朝はこうでなくては。白いご飯と味噌汁に納豆、漬物と悦子の胸が、朝の必需品だ。
 何なら朝の風物詩として、ラジオ体操に組み込んでもいい。ラジオ体操第一、まずは悦子の胸元を覗き込む背伸びの体操! イチ! ニ! サン! シ!
 ……うん、悪くない。
「全日本くだらなさ選手権」。そんなものがあるとすれば、関東大会でベスト4に残りそうなほどの、くだらない自己満足。それで心を満たしつつ、恭平は悦子の運転する車の助手席へと乗り込む。
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