やくたたずの恋
空気の抜けたような返事をして、恭平は窓の外へと目を遣る。大学生らしき若い男女たちが、駅から列を成して歩いているのが見える。この近くに有名大学があったことを思い出し、目の前が一瞬、ざらついた砂混じりの映像になった。
歩道を明るい表情で歩く学生たち。12年前は、自分も彼らと同じ大学生だった。欅や銀杏の葉が影を作る、広いキャンパスの中で、毎日仲間たちと一緒に過ごしていた。そして傍にはいつも、敦也と志帆がいた。
「嫌よ! 私は嫌! でも……仕方ないの! これしか方法がないんだもの!」
恭平の頭の中に、あの時の志帆の声が響く。
今でもはっきりと蘇ってくるのは、あの時のことを絶えず思い出し続けているからだ。今日だって夢に見たではないか。彼女の涙、叫び声、こちらへと伸ばす指。
それは最早、「思い出」などと言った感傷的なものではない。何度も繰り返される、タチの悪いCMのようなものになり果てている。
歩道を明るい表情で歩く学生たち。12年前は、自分も彼らと同じ大学生だった。欅や銀杏の葉が影を作る、広いキャンパスの中で、毎日仲間たちと一緒に過ごしていた。そして傍にはいつも、敦也と志帆がいた。
「嫌よ! 私は嫌! でも……仕方ないの! これしか方法がないんだもの!」
恭平の頭の中に、あの時の志帆の声が響く。
今でもはっきりと蘇ってくるのは、あの時のことを絶えず思い出し続けているからだ。今日だって夢に見たではないか。彼女の涙、叫び声、こちらへと伸ばす指。
それは最早、「思い出」などと言った感傷的なものではない。何度も繰り返される、タチの悪いCMのようなものになり果てている。