やくたたずの恋
* * *
それから15分ほどで、『Office Camellia』の事務所のあるマンションへと着いた。
地下にある駐車場から、エレベーターで11階のフロアへと降り立つ。エレベーターのドアが開いた瞬間、元気のいい声が聞こえてきた。
「おはようございます!」
ピヨピヨピヨピヨピー! 恭平にはそう聞こえた。どう考えてもそれが、雛子の声だったからだ。
雛子はエレベーターの近くで待ちかまえていたようで、恭平と悦子の姿を見るなり、ぴょん、と弾むように、彼らの前へと飛び出してきた。初めて自分で餌を見つけた、誇らしげなヒヨコのように。