やくたたずの恋
 恭平と悦子が同時に、まぬけな声を上げる。声だけではない。呆気に取られて、表情までもがまぬけになっていた。ひょっとことおかめ。傍から見ると、そんなお面の見本市として見えたはずだ。
 だが、雛子は二人の様子を気にすることなく、新人アイドルのように、はりきって自己アピールをし続ける。
「恭平さんのところで働き続けてれば、いつか恭平さんを好きになれるような気がするんです! そして、私が恭平さんを好きになることができれば、恭平さんだって私と結婚してくれますよね? だって、好きな人と結婚するんですから!」
 それは、一晩考えた雛子が捻り出した「結論」だった。
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