やくたたずの恋
「私ね、あなたのお父様のこと、全然知らなかったの。お見合いでいきなり会わされたと思ったら、あれよあれよ……って感じで、結納まで済んでた感じだったわ。私が結婚したいかどうかなんて、全く訊かれなかったわねぇ」
そう話す母の口調は、いたって呑気なものだった。どこか遠い国のおとぎ話でも語っているような感じだった。むかしむかし、あるところに、知らない男と見合いをさせられて、結婚させられたお姫様がおりましたとさ……。
「えーっ! お父様のことを何も知らなかったのに、どうして結婚する気になれたの?」
雛子の素直な疑問に、母は笑顔で答えた。
「どんな人がお相手であってもね、好きになろうと努力すれば、大丈夫なのよ」
「好き」というふんわりした言葉に、マッチョな響きを持つ「努力」という二文字は、全く似合わない。ミスマッチじゃなく、完全なミスだ。マッチしていない。
だが、雛子の母が言うことによって、それも当たり前なのかな、と妙に納得させられてしまったのも確かだった。
そう話す母の口調は、いたって呑気なものだった。どこか遠い国のおとぎ話でも語っているような感じだった。むかしむかし、あるところに、知らない男と見合いをさせられて、結婚させられたお姫様がおりましたとさ……。
「えーっ! お父様のことを何も知らなかったのに、どうして結婚する気になれたの?」
雛子の素直な疑問に、母は笑顔で答えた。
「どんな人がお相手であってもね、好きになろうと努力すれば、大丈夫なのよ」
「好き」というふんわりした言葉に、マッチョな響きを持つ「努力」という二文字は、全く似合わない。ミスマッチじゃなく、完全なミスだ。マッチしていない。
だが、雛子の母が言うことによって、それも当たり前なのかな、と妙に納得させられてしまったのも確かだった。