やくたたずの恋
「恭平さん、無事にお仕事が終了しました!」
 ドアを開け、弾むようにして中へと入ってくる雛子の姿を見て、恭平は咥えた煙草を落としそうになる。
「おっ……お前! ど、どうしたんだよ……!」
「え? ちゃんと沢田様とのお仕事を完了しましたけど?」
 仕事? 完了? それはこの会社を経営する者としては、喜ばしいことのはずだ。なのに、恭平は全く嬉しくなかった。
 これは……どういうことだ?
 恭平は冷静さを装い、煙草を咥え直して「……で、沢田様は?」と尋ねる。
「沢田様はどうだったんだ? 面倒くさい客のはずだぞ、あの人は!」
「えーっと、最初は黙ったままだったんですけど、私がお茶を淹れてさしあげたら、とても喜んでくださったんです! それからはずーっと、二人で楽しくお話をさせていただきました!」
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