やくたたずの恋
 雛子の言葉が終わるのを待つようにして、事務室の電話が鳴った。悦子が慌ててデスクに駆け寄り、受話器を取った。
「はい、『Office Camellia』でございます。……あ! さ、沢田様! い、いつもお世話になりまして! ……え? は、はい。では、今後は雛子ちゃんをご指名、ということで……はい、かしこまりました! では、よろしくお願い致します」
「……どうした?」
 受話器を置いた悦子に、恭平が問いかける。悦子の顔は、怪談でも語り出しそうなほどに青くなっていた。
「沢田様が……笑ってたわ……。いつも機嫌の悪い沢田様が……笑ってた……。で、これからは週一で、ヒヨコちゃんを指名したいって……。ヒヨコちゃんを気に入ったっておっしゃって……」
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