やくたたずの恋
16.ヒヨコ、小悪魔になる。(後編)
 綺麗な薔薇には棘がある。
 それは分かる。綺麗な女で痛い目に遭わされた経験が、恭平にもある。だけどこれは何だろう?
 可愛いヒヨコには、悪魔のしっぽがある。
 きっとそんなところだ。黄色い産毛に覆われた庇護欲をそそるヒヨコが、実はとんでもない小悪魔だった。そんなのは、冗談にしてもタチが悪すぎる。
 では、冗談ではなかったとしたら、この目の前にいる謎の生き物は一体何なのだ。貧乳で、ヒヨコで、健気なお嬢様。そうじゃなかったと言うのか。
 ピヨピヨと鳴り響いていたはずの雛子の声。それが恭平の頭の中で、いよいよはっきりと聞こえ始める。
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