やくたたずの恋
瞬間、雛子は傷ついた顔をする。それは計算済みだ。でも本題はそこじゃない。恭平はあえて声のボリュームを絞り、話し始めた。
「そして……見ての通り、俺はおっさんだ。あんたには俺よりもっと、釣り合う男がいるだろーが。ジジイが若い女と結婚するなんて、グロテスクにも程があるぜ?」
それは深夜のラジオ番組の、DJの口調に似ていた。密やかなポエムを呟き、小洒落たジャズナンバーを紹介しそうな雰囲気。では次の曲に参りましょう。東京都のヒヨコさんからのリクエストで、ビル・エヴァンス・トリオの『いつか王子様が』です。
彼女にだって、ふさわしい王子様がいつの日かやって来るだろう。その願いをこめ、恭平は心の中で、ジャズトリオの名曲に耳を傾けた。
「そんなの関係ないです!」
雛子の叫び声に、ジャズトリオの演奏は一瞬で打ち切られてしまった。
「結婚する、しないは、私が恭平さんを好きになれるかどうかで決まるんですから!」
「へぇ……。そうかそうか」
恭平は怠そうに腰を上げ、雛子の近くへと足を進めた。
「そして……見ての通り、俺はおっさんだ。あんたには俺よりもっと、釣り合う男がいるだろーが。ジジイが若い女と結婚するなんて、グロテスクにも程があるぜ?」
それは深夜のラジオ番組の、DJの口調に似ていた。密やかなポエムを呟き、小洒落たジャズナンバーを紹介しそうな雰囲気。では次の曲に参りましょう。東京都のヒヨコさんからのリクエストで、ビル・エヴァンス・トリオの『いつか王子様が』です。
彼女にだって、ふさわしい王子様がいつの日かやって来るだろう。その願いをこめ、恭平は心の中で、ジャズトリオの名曲に耳を傾けた。
「そんなの関係ないです!」
雛子の叫び声に、ジャズトリオの演奏は一瞬で打ち切られてしまった。
「結婚する、しないは、私が恭平さんを好きになれるかどうかで決まるんですから!」
「へぇ……。そうかそうか」
恭平は怠そうに腰を上げ、雛子の近くへと足を進めた。