やくたたずの恋
「じゃあ、お前の貧乳を揉めば、少しはデカくなって、結婚に近づけるのかねぇ……」
 低い山が二つ並ぶ雛子の胸へと、恭平は手を伸ばす。どんなに小さな胸でも、柔らかい感触を味わえるはずだった。なのに指は、なぜか固いものに当たってしまう。
「いっ……痛ってえええ!」
 突き指しそうな感触に、恭平は顔を歪めた。
「これ、おさわり防止ガードなんです。私が恭平さんを好きにならない限り、これで恭平さんのセクハラに対抗していきますから!」
 雛子は手に持った四角い鉄板を、恭平へと見せつける。
 こんな男を、雛子が好きになれるはずもない。いつかは好きになれるかも知れないが、それがいつになるのやら。
 それは果てしない道のりだった。ゴールのないマラソンを、ひたすら走る気分にもなってくるのだ。
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