やくたたずの恋

     * * *


「それはお前が悪いよ、恭平。雛子ちゃんを見くびり過ぎだ」
 翌日の朝、出勤前の敦也が『Office Camellia』の事務室へとやって来ていた。雛子の仕事の顛末を聞き、ははは、と楽しげに笑い声を上げている。
 生クリームとチョコレートソースとメイプルシロップ、その上にアイスクリームを載せたパンケーキ。そんなレベルの甘さを持つ顔を、敦也は緩めている。
 それに無理矢理わさびを加えるような表情をして、恭平は舌打ちした。
「……笑いごとじゃねぇよ」
「いいや、笑えるよ。笑わせてもらう」
 ソファセットで向かい合う恭平を見て、敦也は更に笑みを濃くした。
「雛子ちゃんは気が利くし、沢田さんにとっては満足のいく相手だったんだろう。よかったじゃないか。気むずかしい客が一人減ったようなものだろう?」
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