やくたたずの恋
「俺にとっては、それが不都合なんだよ。あのお嬢ちゃんには、この仕事で挫折してもらって、さっさとここを辞めてほしいんだけどな」
「それは無理なんじゃないかな? 彼女、きっと人気が出るよ。幼い部分はあるけれど、十分魅力的だしね。数年後にはその幼さも取れて、どんな男でも惹きつけるタイプになりそうだしさ。……って、それぐらい、お前も気づいてるんだろう?」
 恭平は返事をしない。その代わりとばかりに、煙草に火を点け、ふぅ、と煙を吐き出した。
「それでも俺は、あのお嬢ちゃんと結婚する気はねぇよ。影山の家にも、戻る気はない」
「そうか。それはよかった。好都合だ」
 何が好都合なのか。そう思い、恭平はぴくりと眉を上げる。その反応を待っていたかのように、敦也はゆっくりと目を細める。
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