やくたたずの恋
「おい、ヒヨコ! 今日のお前の客は、湯川様だからな!」
 その声に、女たちが驚きの目を向ける。
「え? 湯川さん? あのどスケベな?」
「えーっ! 影山ちゃん、酷いよ! 入ったばっかりの雛子ちゃんに、セクハラキングの湯川さんの相手させるなんて!」
 女たちがざわめき始める中で、敦也は露骨に眉を顰めた。
「おい、恭平。そんな相手、雛子ちゃんにはまだ早いんじゃないか?」
「うるせぇ! てめぇは黙ってろ!」
 自分が言われた訳でもないのに、恭平の罵声に雛子は肩を竦めた。
 恭平さん、怒ってる。どうしたんだろう?
 初めて会った時にも見た、恭平の鋭い視線。それに耐えながら、雛子は小さな体を震わせた。
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