やくたたずの恋
「影山ちゃんさぁ、あんたの今の、その不機嫌さって何なの?」
「ああ? 何だって?」
 恭平は返事をするものの、足を止めず、137周目のトラックへと進んでいく。
「あのいたいけなお嬢ちゃんの保護者として、心配してるから不機嫌なの? それとも、この会社の社長として、従業員が痛い目に遭ってないか……って心配してる感じ?」
「まぁ、そんなところだ」
「あら、私にはそう思えないけどー」
 ソファに寄りかかる悦子が、猫のあくびに似た声を上げる。それに反応してか、恭平の一周当たりのタイムが、急に遅くなった。
< 221 / 464 >

この作品をシェア

pagetop