やくたたずの恋
「私……変なことを言いましたか? 私って世間知らずだから、空気を読めないって言うか……。だから父には、『役立たず』って言われるのも仕方ないんですよね……」
「役立たず? それって、お前のことか? 横田議員が、お前をそう呼んでるのか?」
「はい」
 小さく頷いた雛子は、恥ずかしげに目を逸らした。
「父は、跡継ぎになる男の子が欲しかったんです。だけど母は、娘の私しか産めなくって……。だから父はいつも、私を『跡継ぎにもなれない役立たずだ』って言うんです。そんな父には、何をやっても認めてもらえないから、せめて父のために結婚したいって思ったんですけど」
 話せば話すほど、雛子は自分がダメな人間に思えてきてしまう。父の望む跡継ぎにもなれず、世間知らずで、役立たず。その上、父の望んだ結婚の話も、すんなり進めることができないなんて。
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