やくたたずの恋
3.恋は、あせらず。(前編)
 エー、ビー、シー、ディー……。
 恭平の許から家へと帰る間、雛子は『ABCの歌』を知らないうちに口ずさんでいた。
 せっかく「A」から歌い出しても、「B」で歌が止まる。そして自分の胸を見て、あの男の言葉までも思い出してしまうのだ。
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