やくたたずの恋
他に人はいないのか。雛子は部屋の中をもう一度見渡した。だがこの部屋に存在する人間は、目の前にいる車椅子の男だけなのだ。短い白髪と、皺の寄った顔を見せる、老人そのものの男。
雛子は挨拶をするのも忘れ、振り返って志帆を見る。おそらく彼女は、恭平と同年代だろう。30代の女としての美しさを、欠けることのない月のように放っている。
そんな彼女の「夫」。それがこの部屋にいるとなると、つまり、この老人しかいないのだ。
……嘘だ。こんな若くて綺麗な人と、どうしてこんなおじいちゃんが……。
美女と野獣ならぬ、美女と老人。この老人も、真実の愛を見つければ、若くハンサムな王子様に戻るのだろうか?
後ろでドアが閉まる音がして、雛子は背筋を伸ばす。志帆が消えた部屋の中で、老人は右手で車椅子を動かし、雛子の近くへとやって来た。
雛子は挨拶をするのも忘れ、振り返って志帆を見る。おそらく彼女は、恭平と同年代だろう。30代の女としての美しさを、欠けることのない月のように放っている。
そんな彼女の「夫」。それがこの部屋にいるとなると、つまり、この老人しかいないのだ。
……嘘だ。こんな若くて綺麗な人と、どうしてこんなおじいちゃんが……。
美女と野獣ならぬ、美女と老人。この老人も、真実の愛を見つければ、若くハンサムな王子様に戻るのだろうか?
後ろでドアが閉まる音がして、雛子は背筋を伸ばす。志帆が消えた部屋の中で、老人は右手で車椅子を動かし、雛子の近くへとやって来た。