やくたたずの恋
「本当の仕事の内容、志帆さんから聞きました」
「……そうか」
「そうか、じゃないですよ! 何で本当のことを言ってくれなかったんですか! 星野さんを誘惑するなんて、私にできる訳ないじゃないですか!」
「当たり前だ。だからお前には言わなかったんだ」
 恭平はシガレットケースから煙草を取り、咥えて火を点けた。煙草の先の赤い火を見ながら、上に向かって煙を吐き出す。
「お前が星野さんを誘惑して、離婚に追い込むことなんかできるはずもない。それに俺は、そんな志帆の考えには反対だしな。バカげてる」
 そうですね。バカげてますよね。だけどそれは、志帆さんがあなたを思っているからなんです。
「お前といい、志帆といい、貧乳の考えることはよく分からねーよ」
「私も……よく分からないです。志帆さんのことも、自分のことも」
< 268 / 464 >

この作品をシェア

pagetop