やくたたずの恋
「お父様には『役立たず』って言われて、役に立とうと思ったら、恭平さんには結婚してもらえないし! 私は……ずっとこのままなんです、きっと! ずっと、役立たずのまんまなんです!」
 恭平を好きにもなれないし、恭平に愛されることも叶わない。それは、「役立たず」の王道を突き進むようなものだ。
 星野も、志帆自身も、雛子が志帆に似ていると言っていた。たが、似ているはずなどない。愛される人と、愛されない自分。月とすっぽんだ。被害者という共通点があるだけで、後は何も似てなどいない。
 喉が震え、ううう、と唸りながら雛子は泣いていた。その頭に、そっと恭平が手を差し伸べる。
「おい、ヒヨコ」
「やだ!」
 毛並みを確かめるように、恭平が雛子の髪を撫でる。それを拒否しようと、雛子は頭を振った。負けずに恭平は撫で続け、震えが止まりそうな頃合いに、雛子の頬を両手で触った。
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