やくたたずの恋

「その時、私は知ったんだ。恭平くんと志帆が付き合っているということをね」
　……ああ、やっぱりそうだったんだ。
　何となく想像はついていたせいもあり、二人の関係を知らされても、ショックは少ない。だけど、ずしんと重い何かが、雛子の心にのしかかる。
「二人はお似合いのカップルだったよ。特に、あの頃の志帆は美しかったしねぇ……。まぁ、志帆は今でも綺麗だけどね」
　嫌みも照れもなく、志帆を褒め称える星野。その少年のような無邪気な口振りに、雛子は思わず微笑んだ。
「星野さんは、志帆さんを愛していらっしゃるんですね」
「……そうだね」
　星野は目を瞑り、ため息で眼鏡を曇らせる。
「時々、彼女への気持ちが消えてしまったんじゃないか、と思うこともあるんだ。それでも、私は志帆を手放すことはできない。ふとした瞬間に、志帆に対する熱い想いがこみ上げてくる。これが……愛なんだろうなぁ」