やくたたずの恋
「お嬢様、影山社長がいらっしゃってますよ」
「影山のおじ様が?」
 うわ! 何てタイミング!
 その影山社長の息子である、恭平さんに会ってきたばかりなのに!
 雛子は玄関から上がり、挨拶をするために応接間へと向かった。
「失礼します」
 ノックをして応接間へと入る。赤い絨毯に、赤いゴブラン織りのソファ。それを取り囲むのは、古びた振り子時計と使われていない暖炉、壁に掛かった鹿の剥製だ。
 昭和の時代を、下手な画家が分かりやすく描いたような世界。その中で、雛子の父と影山社長が、向かい合わせで座っていた。
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