やくたたずの恋
 星野は、恭平と志帆を「お似合いだった」と言っていた。そんな二人が恨み恨まれる関係になる、というのはどういうことなのだろう?
 寝ぼけていた恭平が呟いた、「志帆」という甘い響き。そして手への優しいキス。あれは確実に、志帆に向けられたものだった。それも全部、打ち消してしまうようなことなのだろうか?
 そんな雛子の疑問を打ち消すように、事務室の電話が鳴り、悦子が出る。
「はい、『Office Camellia』でございます。……あら、こんにちは! えーっと、ちょっと待ってくださいね」
 悦子は受話器を押さえ、雛子へと視線を向ける。
「ヒヨコちゃん、敦也さんからご指名よ。今日の夜、あなたをレンタルしたいんですって」
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