やくたたずの恋
24.これが、恋?(中編)
 新規開店のイタリアンレストラン。そのプレオープンの日ということもあり、店内は大勢の招待客で賑わっていた。
 テラコッタ造りの壁に囲まれた室内に、山吹色のテーブルが散りばめられている。その中の一つに、雛子は敦也と向かい合って座っていた。
「そうか。とうとう志帆ちゃんに会ったのか……」
 敦也がため息混じりに呟けば、グラスの中のワインが揺れる。
「はい。とても綺麗な人でした」
 だけど……寂しそうな感じもした人でした。
 素直にそうは言えないまま、雛子は敦也を見た。今日もジェントル、そして爽やか。ほのかにミントの香りまでもが漂ってきそうだ。
 彼の前世はきっと、ハーブの香り漂う王国の王子だったに違いない。存在するだけで、周りの人々を清々しくさせていく、ミント王子だ。ことあるごとに人を「貧乳」呼ばわりする、煙草の国のヤニ王子とは大違いだ。
< 287 / 464 >

この作品をシェア

pagetop