やくたたずの恋
 前菜の皿が下げられ、ソムリエが敦也の空いたグラスへとワインをサーブする。その赤い流れを見ながら、敦也は言いにくそうに口を開いた。
「志帆ちゃんに会ったということは、恭平と志帆ちゃんの関係についても聞いたのかな?」
「え、ええ。星野さんから少しだけですけど……。お二人は以前、お付き合いしていたんですね」
「そう。美男美女のカップルでね、学部内でも評判だったんだ。二人とも、高校時代からずっと付き合い続けてた仲だったし……。だからこそ僕は、雛子ちゃんのことが心配だったんだ。雛子ちゃんは、志帆ちゃんの若い頃に似ているからね」
「それって、本当なんですか?」
 雛子はテーブル越しに身を乗り出し、声を潜めた。
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