やくたたずの恋
「はーい、そこまでー!」
試合終了。それを知らせるホイッスルに似た声が、どこからともなく聞こえる。敦也はやっとのことで雛子の手を剥がすと、視線を彼女の背後へと投げ出した。
「……恭平」
敦也の呆然とした声に釣られ、雛子も振り返る。レストランの外壁に沿うように停められた白いセダンが、いくつかの街頭に照らされて浮かび上がっていた。
そして、それに寄りかかる恭平の姿が、影絵のように見えている。
「なぁ、敦也。俺はお前を嫌いじゃない。お前はいいヤツだし、仕事もできる。しかも長年の付き合いだしな」
恭平は咥えていた煙草をつまみ、煙を吐き出す。その白い煙幕の中を通り抜け、雛子と敦也の前へとやって来た。
「だけどな、お前は時々、人の立場を利用しようとすることがあるだろ? それはどうかと思うぜ?」
「だから……何だって言うんだ?」
「前にも言っただろーが。結婚は、利害関係でするもんじゃねぇってことだよ」
恭平は雛子の横で立ち止まると、彼女の腕を掴んだ。
試合終了。それを知らせるホイッスルに似た声が、どこからともなく聞こえる。敦也はやっとのことで雛子の手を剥がすと、視線を彼女の背後へと投げ出した。
「……恭平」
敦也の呆然とした声に釣られ、雛子も振り返る。レストランの外壁に沿うように停められた白いセダンが、いくつかの街頭に照らされて浮かび上がっていた。
そして、それに寄りかかる恭平の姿が、影絵のように見えている。
「なぁ、敦也。俺はお前を嫌いじゃない。お前はいいヤツだし、仕事もできる。しかも長年の付き合いだしな」
恭平は咥えていた煙草をつまみ、煙を吐き出す。その白い煙幕の中を通り抜け、雛子と敦也の前へとやって来た。
「だけどな、お前は時々、人の立場を利用しようとすることがあるだろ? それはどうかと思うぜ?」
「だから……何だって言うんだ?」
「前にも言っただろーが。結婚は、利害関係でするもんじゃねぇってことだよ」
恭平は雛子の横で立ち止まると、彼女の腕を掴んだ。