やくたたずの恋
「……敦也は、お前の父親のこと、知ってただろ?」
恭平の言葉に、雛子の目に力がこもる。やっとのことで生気を取り戻した雛子は、「は、はい」と頷いた。
「でも、敦也さんはどうして、私の父のことをご存じだったんでしょうか?」
「お前のことを調べたらしいんだ。お前と結婚するためにな」
そこで言葉を切ると、恭平は短くなった煙草を消し、新しい煙草に火を点けた。
「俺も最初は、お前と敦也ならうまく行くような気がしていた。だけどあいつは、お前の父親とのコネクション作りのために、お前と結婚したがってるみたいなんだよな」
そうだったのか。雛子は一人納得し、再び外の景色へと目を遣る。横を通り過ぎる車のテールライトが、赤い筋を描いていく。それは、雛子を過去の記憶へと連れていく道だ。
小さい頃から、祖父や父の権力目当てで、雛子へと近づいてくる人間は多かった。祖父が現役だった頃は「あの子は大臣の孫だから」と言われ、父の代に変わった後には「あの子は後の大臣の娘だから」と言われ続け、その繋がりを欲する人々の糸に雁字搦めにされていた。
敦也の結婚の申し出だって、結局はその延長だということだ。
恭平の言葉に、雛子の目に力がこもる。やっとのことで生気を取り戻した雛子は、「は、はい」と頷いた。
「でも、敦也さんはどうして、私の父のことをご存じだったんでしょうか?」
「お前のことを調べたらしいんだ。お前と結婚するためにな」
そこで言葉を切ると、恭平は短くなった煙草を消し、新しい煙草に火を点けた。
「俺も最初は、お前と敦也ならうまく行くような気がしていた。だけどあいつは、お前の父親とのコネクション作りのために、お前と結婚したがってるみたいなんだよな」
そうだったのか。雛子は一人納得し、再び外の景色へと目を遣る。横を通り過ぎる車のテールライトが、赤い筋を描いていく。それは、雛子を過去の記憶へと連れていく道だ。
小さい頃から、祖父や父の権力目当てで、雛子へと近づいてくる人間は多かった。祖父が現役だった頃は「あの子は大臣の孫だから」と言われ、父の代に変わった後には「あの子は後の大臣の娘だから」と言われ続け、その繋がりを欲する人々の糸に雁字搦めにされていた。
敦也の結婚の申し出だって、結局はその延長だということだ。